10と、いつつめ Aster from POCHI

Shiho

わたしも被爆者ならばと願って

それは被爆者の願いではないと取り消して

けれどもっとわかりたくて

決して願ってはならないことを願ってしまう


被爆者たちはまた

死んでいたのが自分ならばと願って

それは死んだひとの願いではないと思って

もしくはまた別の理由で取り消したとして

けれどやっぱりどうしても願ってしまうならば

被爆者ならばと願うことは死を願うことになるのだろうか

その気持ちをまた、わかりたいわたしは


夕刻、広島城の横を歩きながら

そんなことを考えていた女の子


POCHI

あなたの生い立ちを知る度に

自分がいかに幸福かを思い知らされ

あなたの手にした宝物を見つめる度に

自分は決して手に入れられないことに絶望するんです


他人の幸せを妬み嫉み

自分の欠落を恨み辛み

栄養不足とひもじさに耐えかねるほど貧しく

あたたかさとやさしさが劇薬となった乏しい心は

「いっそ皆不幸であればいい」と

ほんの一瞬でも考えたんでしょうけど

それは実はあの頃自分も同じだったんだ、と

「分かち合えないこと」を分かち合い

「不幸をひけらかすこと」を不幸だと慰め合うほど

ふたりとも大人になったんですね


でもいずれにしても

あなたが今元気でここに生きていてくれて

少なくとも自分は幸せですよ



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