My Little Words
ひとつめ
今日だけは そっとしておいてほしい
今日だけは 叫ばないでほしい
今日だけは この町を わたしたちだけのものにしてしまいたい
願ったわけではないのに この町は世界のヒロシマ
今日だけは ただ今日が 過ぎていくのを眺めている
わたしたち
just only today please let us alone
just only today please don't shout loud
just only today I want this place to be only ours
nobody wanted, but this is Hiroshima in the world
just only today
just today passes by
ふたつめ
空を仰ぎ 川を見つめ 土を踏み
きらりと光るものを探した あの水は同じ水だろうか 足下にはまだ命がある
出会えなかったかもしれない親友がいるように
出会えたかもしれないひとがいる
わたしたちはそれらすべてを感じているから
だから充分とは言えないし
大丈夫とは言えないけれど
そんな風にこの町でわたしたちが育ったこと
知っていてくれたら
何か助けになりますか?
looking up the sky
looking down the river
standing on the ground
look for something shines
Is that the same water?
there're still lives under my foot
I have the best friend who I might not have even seen
I don't know many people who I might have seen
because I'm feeling them,
of course it's not enough,
it doesn't mean peace,
but if you knew that,
that we have lived here like this,
does it help you some?
みっつめ
あの8月、みんな死んだらいいと思ったんでしょうけど
どんなにすごい爆弾を落としても、どんなに失っても
わたしたちは命を増やす
それが、わたしたちの反撃です。
In that August,
you never cared our lives to be killed
how dreadful bomb it is,
how many lives we lose,
we will have new life.
that's our way to fight back.
よっつめ
東京のアパートで 名前を忘れた歌を口ずさむ日曜日
「“青い空は 青いままで 子どもらに伝えたい あの日 8月の朝 影まで燃え尽きた
父よ 母よ 兄弟たちよ 命の重みを 肩に背負って…” なんじゃった?」
「“胸に抱いて”じゃろう」 と兄
One beautiful day, here, in Tokyo,
I was singing a song I've forgotten its name
“I want to hand children the blue sky as its blue. That day, August morning, even a shadow burned out.
Father, Mother, Brothers and Sisters, I will carry …and?”
“keep it in my heart the weight of life”
my brother sang along.
※青い空は
作曲:大西進
作詞:小森香子
青い空は 青いままで 子どもらに伝えたい
燃える 8月の朝 影まで燃え尽きた
父の 母の 兄弟たちの
命の重みを 肩に背負って
胸に抱いて
いつつめ
満員電車によろめいて去った8:15
わたしさえ、遠くなってしまったのか
8:15
has gone on a crowded train.
Even me? far away from Hiroshima.
むっつめ
Black Rainがこころに染みて息ができない
でもここでは、わたしにしか雨は降らないらしいのだ
言いたいことも言わないで
何も変えられないまま
ここにわたしという人間が居ることに
ヒロシマのひとが気付かないでいてくれたらいいと願うわたしを
どうか
許さないでください
Black Rain makes dots on my heart and hurts me.
but nobody here notices black rain.
I lost words here.
I lost hope here.
and wish and wish to Hiroshima people.
please
don't
notice
that I exist here.
and I hate
myself like this.
ななつめ
叫びたくはない やさしく伝えたい
叫びたくない それなのに
叫んでしもうた
we don't shout, no,
we don't shout,
I know
but I didn't know
this distance
やっつめ
「わたし」でなく「わたしたち」と言いたくて言えなくて主語を無くす。
Is it ‘we’ or ‘I’ ?
安らかに眠って下さい
過ちは繰返しませぬから
please please rest in peace.
_ promise you all not to repeat the evil.
※広島 平和公園の碑文
公式英訳
Let all the souls here rest in peace,
For we shall not repeat the evil
ここのつめ
こわかったこと
好きなひとと別れたこと
じいちゃんが死んでしもうたこと
かなわんかった「いつか」とか
ほんとは誰にも話したくない
it is to talk about
what you scared deadly
how you broke up your boyfriend
when your mother died
someday which never comes
nobody really wants to talk
とう
憎む元気もないほどかなしい
too sad to have energy to hate somebody
10と、ひとつめ
あなたは笑えることが
わたしには笑えないように
あなたには笑えないことを
わたしは笑ってしまうかもしれない
You laugh what I can't laugh.
Am I laughing what you can't laugh?
10と、ふたつめ
この町に原爆が落とされ
向田邦子は空襲に遭い
同い年のアンネ・フランクは隠れ家生活を続け、しかし日記は途切れた
足下にはヒロシマの土があり
東京大空襲より先に邦子の父親のかなしみを知り
ナチスより先にアンネの生き様を知った
広島では土砂が崩れ
福井は豪雪に苦しみ
福島では新たな苦しみがあるらしい
あなたが教えてくれたからわかったこと
わたしはわたしの話を
あなたはあなたの話を
tell me your story.
10と、みっつめ
びっくりした
8時15分
うれしかった
お母さんに会えて
(被爆者の言葉より)
surprised
at 8:15
so glad
to see my mother again
(from words Hibakusha said)
10と、よっつめ
女の子へ
あなたの命と勇気のおかげで
わたしに親友ができました。
Dear a girl,
Thank you for your life and courage,
I have got the best friend in my life.
10と、いつつめ
わたしも被爆者ならばと願って
それは被爆者の願いではないと取り消して
けれどもっとわかりたくて
決して願ってはならないことを願ってしまう
被爆者たちはまた
死んでいたのが自分ならばと願って
それは死んだひとの願いではないと思って
もしくはまた別の理由で取り消したとして
けれどやっぱりどうしても願ってしまうならば
被爆者ならばと願うことは死を願うことになるのだろうか
その気持ちをまた、わかりたいわたしは
夕刻、広島城の横を歩きながら
そんなことを考えていた女の子
If I were a Hibakusha,I wondered
walking by the river after school
If I had been dead,they wonder
they even wish,I know
then does it mean
I wish to die when I wish to be Hibakusha?
because I really want to understand them,
I sometimes wish what I must not wish
10と、むっつめ
校長先生の話はいつもなんだかちぐはぐで
今朝はおもしろそうだと聞いてみたらやっぱりおしまいはへんてこで
わたしたち、がっくり
犬の話、カープの話、一つ一つはわるくないのに、積み上げかたが奇妙なの
国語の先生じゃったってほんまかね まったく寝ずに聞いたのに いや、うちも今日はいける思うた
教室へ戻りながらの批評会
卒業の日の話だって 覚えてはいないのだが
わたしたちの後ろの方で はっとしたひともいたようで
この散らかったテーブルの上も一つ一つを片付けていけばきれいになるじゃろ と母は、
この先どんなに困難に見えることがあっても、細分化して、一つ一つを解決していけばいいのだ、という
あの日の先生の言葉を教えてくれた
思えば一度は何もかも無くなった町で
わたしは育ったのだ
ちょうど朝の礼拝が終わってホールから出ているときだった
ピカッと光ったのは
女の子たちが逃げ込んだ庭園に架かる
駅からは見えるはずのなかった橋を夏の終わりに目に留めた青年が
今わたしと秋の庭園を眺めながらコーヒーを飲んでいる
知らぬ間に散らかったわたしの部屋も
一つ一つの寝坊や疲労や怠惰の積み重なり
知らぬ間に片付くことはない
知らぬ間に積み重なった先の争いが知らぬ間に片付くとしたら
誰も知らぬ、誰もおらぬ、そんなときが来たとき?
でも実は
上京してすぐのわたしと兄の連絡用のホワイトボードに
ゴミをためるな こころにもたまるぞ 母
と知らぬ間にあり
出張で来た父はまた、知らぬ間に片付けて帰っていた
そんなことも稀にある
さて、わたしの経験から言うと
部屋が一番きれいなのは 恋をしたときのようだ
ヒロシマの話かと思ったら恋の話です
先生風にちぐはぐにしてみました
10と、ななつめ
どんなに遠くても、叫ばないこと
と言って絶望しないで
自分の言葉を探し続けること
don't shout
how far they are
don't shout but
don't kill your words
keep looking for your words
10と、やっつめ
春も秋も冬も
春も秋も冬も
and there are
spring,fall,winter,
spring,fall,winter,
10と、ここのつめ
言うんがええんか
言わんでええんか
わかってほしいと言うたばかりに
誰かを傷付けることになりゃあせんか
伝えにゃいけんと言うたばかりに
口に出せるほどのことじゃと軽んじらりゃあせんか
言うんがええんか
言わんでええんか
言うと言わんの狭間で
なんもかも
堂々とは言われん
にじゅう
お母さんがかなしむけぇ
やっぱりいけん
None of mothers want children to be Hibakusha.
That's true.
20と、ひとつめ
会えんかったあなたに手を伸ばす
please take my hand,
20と、ふたつめ
わたしの運命のひとは
あの日死んでしまった誰かの孫かもしれないじゃない
どうしてくれるの?
How dare you killed somebody who could lead to my fiance?